「『歌唱力』の構造」第1章 世間一般から見た『歌唱力』

3.もっと極端な例−有線放送
〜喧騒の中でも聞き分けられる?〜

20歳以上の読者の皆さん、たまには飲み屋へ行かれる方も多いと存じます。 (えっ、毎日のようにですか?)
そんな場で、流れてくる音楽のなかに、たまに不思議と耳にはいってくる歌声がある。 そんな時、「あれ?」と思うようなことはありませんか?
ここでは、そんなことがなぜ起きるのか、分析していきます。

だいたいの飲み屋では、ラジオや有線放送から音楽が流れてきます。 でも、それはあくまでも「バックグラウンド・ミュージック(BGM)」であり、 それ以上の何ものでもないのが普通です。 そして、自分がラジオや有線放送にリクエストをしたのでなければ、 まず真剣にその音楽を聴くことはしないですよね。 そこに集まった人と話し込むとか、ひとりで愚痴をこぼすとか、 そんなものではないでしょうか。

さて、そんな時を過ごす中で、ふと「あの歌声」が聞こえてくる。
あれ?
これこそ、その歌手の「声質」を評価する瞬間なのです。
いつものあの声が聞こえてくる。ほっとする、または不快に思う、 それはどちらでもいいのです。
「あの歌手」の声だ、とわかることが非常に重要なのです。

いまは有線放送にもだいぶ注目が集まるようになったせいか、 ちょっと違うようですが、ひと昔前ぐらいまでは、有線放送のヒット・チャートは、 「声質」評価のバロメーターとして、不動の地位を誇ってきました。 これは、そんなところに原因があるのです。 どんなにレコードが売れている歌手でも、飲んで、しゃべりながら 「あの歌声」が聞こえてこないのでは、有線放送チャートの上位にはこない。 当然ですよね、そうでなければ「聞こえてこない」のですから。 そして、「聞こえてこない」のであれば、リクエストする意味も なくなってしまうのですから。

ちょっと待って、といいたい方もいらっしゃるかも知れません。 でも、これが現実なのです。 決して「きれいな声」だから、「声質」を評価する わけではありません。「よく通る声」であればよい、というものでもないのです。 そんな人でも、独自の声で、かつどんな曲を歌っても「同じ人」だと認識できる ことが、「声質」を評価してもらうには必要なのです。

『歌唱力』を評価することの難しさというか、不条理さというか。 「声質」の評価には、そんなものがあります。

Copyright(c) 1998,1999 歌謡歌手診断士:石原隆行 All rights reserved.

・前へ      ・次へ

・「第1章」にもどる

・表紙/目次へ

・部屋の入り口へ


このページは GeoCitiesです 無料ホームページをどうぞ

1998.09.10作成
ka_ka_shin@yahoo.co.jp