歌謡歌手診断士の「流行観察局」

「ウラBTTB」大ヒットの『ウラ』にあるもの

〜音楽ビジネス業界より一般企業のほうが時代の雰囲気に敏感?〜

「インスト・シングルとしてはオリコン史上初!」の文字が躍る。
6/28付オリコン・シングル・チャートで、 ボーカルのないインストゥルメンタル・ナンバーが初の総合1位に輝いた。 坂本龍一の「energy flow(ウラBTTB)」である。
一週間の売上を示す「得点」は13,495(この10倍が推定される実売枚数)と、 「新譜の谷間」のため低水準であるが、1位を取ったことには変わりがない。
作品的には、「ピアノ曲」として非常にオーソドックスではあるが、 実にしっかりと作り込まれた曲、という印象である。 そして、落ち着いたテンポと、心地よい旋律とが、 「サンデー毎日」誌の分析の通り、疲れた心を包み込んで、「癒し」てくれる。
そしてなにより嬉しいのが、この曲が最近おなじみのパターン「初登場1位」ではなく、 発売から4週間かけてじっくり浸透し、選好されてトップになったことである。

さて、この曲ははじめからCFで流されることを想定した楽曲である。 しかし、CF曲であるにも関わらず、完全に楽曲の印象が先行している。 実にすばらしいことである。 (これは、同じオリコンの「CM好感度ベスト10」にはいっていないことからも明らか。 「CM好感度」の場合、タレント名と商品名とが結びつく必要性がある。)
某製薬会社側の宣伝コンセプトが明確で、かつ時代の雰囲気に合致していたこと。 そして、「坂本龍一」という人材に恵まれたこと。 この二つのことの相乗効果が、CMとして宣伝効果を見たときには失敗に終わるかも知れないが、 単なるインストゥルメンタル・ナンバーの枠を超える大ヒットを生み出した、といえよう。

これらのことから、この曲はCF曲に終わらず、 将来にわたって「エバー・グリーン」であり続ける、すなわち「名曲」として残っていくことになろう。
それにしても、音楽ビジネス業界のこのていたらくは何であろう。 時代の雰囲気に合った、かつ「おとな」の鑑賞に堪え得る音楽を、 自分たちの力だけでは作れなくなってしまったのであろうか。 目の前のメガ・ヒット狙いに追われて、 「おとな」のための音楽とアーティストの育成をないがしろにしてしまった、自らのその姿勢について、 この機会に改めて猛省すべきである。
このままでは、日本の音楽シーンは、「文化」から完全に孤立し、 見放されてしまうばかりになってしまうのであるから。



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1999.07.02作成 2003.05.09更新
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